台(1日目)

 

ドリームキャストと電子レンジが床に直置きされている。

 

思えば家具や家電は物心ついた時から然るべき台の上に置いてあった。
電子レンジは食器棚の上、ドリームキャストはテレビ台の上にあった。
物を置くとき、まずはそれを置く台が必要だってこと、ちゃんと考えてなかった。当たり前すぎて考えもしなかった、という方が正しいかもしれない。

 

親元を離れてみないとこんなことも分からない。
厳密に言えば親元を離れたのは1年以上前のこと。でもその後暮らしていた親戚の家には、生活に必要な台は十分にあった。

 

 

いや、実際のところ台なんてなくても物は使える。
直置きでも大抵の家電はコンセントが繋がっていれば何の問題もなく動く。
でも、これまでの20数年、台の上にあるのが当たり前だった物たちが床に置いてあると、なんだか寂しい。大切にされていないようでかわいそうになる。床冷たいし。おれもスリッパがほしい。
でもこれはおこがましい考えかも。
直置きでかわいそう、というのは人間側の意見であって、家電自身はそんなこと思ってないかもしれない。
家電と意思疎通ができたとして、直置きはつらいですか?と聞いたところで、『別になんとも思わないけど』と返ってきそうだ。
いや、バルミューダとかの高級家電だったら『お言葉ですが少々耐えられません。早く何かしらの台の上に乗せてください。できればふわふわの絨毯も欲しいです。』ともっと丁寧に不満を口にするかもしれないけれど。

 

生活が不安定だった時期に
『とにかくまずは生活を安定させて、土台を作らなければ。』
と強く感じたことを思い出す。
人間にもちょうどいい台が必要なのかも。 適度なサイズの、しっかりした骨組みの、あわよくば素敵だなと思える台。

それは居心地の良い家かもしれないし、支え合いたい大切な人かもしれないし、絶対に折れない信念かもしれない。
でもなんにしろ自分の手でつくっていかなきゃいけない。さいわいなことにDIYは好き。

最初は寸法を間違えるかもしれない。釘を打つときに指をトンカチで指を叩いてしまうかもしれない。
でも何度も何度も少しずつ改良を重ねて、ちょうどいい台、人生の土台をつくりたい。